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【重要】マルファン症候群等の患者に対するニューキノロン系の抗生物質について

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2019年01月11日

アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)からの警告として、昨年末、アメリカのマルファン財団(The Marfan Foundation )からマルファン症候群等の患者に対するニューキノロン系の抗生物質について、注意喚起のメールが届きました。
日本の専門医にご意見を伺い、また、厚生労働省からも2019年1月10日「使用上の注意」の改訂について通達が出されましたので、急ぎお知らせいたします。

クラビット等、風邪の時等によく処方されているお薬もありますので、マルファン症候群や類縁疾患の患者さん親御さんは、下記をお読みいただき、診察時に医師にご相談ください。

アメリカのマルファン財団(The Marfan Foundation)からの注意喚起

最近のいくつかの研究のレビューでは、ニューキノロン系の抗生物質を摂取すると動脈瘤や動脈解離のリスクが2倍になるので、マルファン症候群、エーラスダンロス症候群、ロイス・ディーツ症候群等の動脈瘤や動脈解離疾患をともなう遺伝性疾患患者には 使用すべきでない。

抗生物質の処方を開始する前に、自分がマルファン症候群等であることを医療者に伝える必要がある。

現在ニューキノロン系の抗生物質を服用している場合は、自己判断で服用を辞めず、専門家に相談すること、となっています。

>>The Marfan Foundation : FDA WARNING   

アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)からの警告

>FDA warns about increased risk of ruptures or tears in the aorta blood vessel with fluoroquinolone antibiotics in certain patients

 

>>FDA In Brief: FDA warns that fluoroquinolone antibiotics can cause aortic aneurysm in certain patients

専門医 森崎隆幸先生(東京大学医科学研究所附属病院)よりコメントをいただきました

ニューキノロン系の抗生物質と動脈瘤・動脈解離の因果関係は高齢者ではリスクと考えられるとする論文報告が複数あり、高齢者だけでなく、若年でもリスクが増加するとの報告もあることから、FDAは予防原則の観点から警告が出されたと考えます。

日本でも、FDAの警告をうけて、厚労省より「慎重投与」の通知が出されました。

マルファン症候群でのニューキノロン系の抗生物質がどのように動脈瘤・動脈解離発症に影響するかについては今後の研究を待つ必要はあるものの、日本ではニューキノロン系の抗生物質はかなり汎用され、本来使用すべきでないウイルス感染症(風邪など含む)にも使用されることもあることから、マルファン症候群の方は代替薬がある場合にはニューキノロン系の抗生物質は使わない事が望ましいと考えます。

厚生労働省の通達

>>薬生安発0110 第2号 平成31年1月10日

別紙4および5 624 合成抗菌剤  
出典:厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000466525.pdf(以下、一部抜粋)

 

【措置内容】以下のように使用上の注意を改めること。

 

[慎重投与]の項に

「大動脈瘤又は大動脈解離を合併している患者、大動脈瘤又は大動脈解離の 既往、家族歴若しくはリスク因子(マルファン症候群等)を有する患者」

を追記し、[重要な基本的注意]の項に

「大動脈瘤、大動脈解離を引き起こすことがあるので、観察を十分に行うとともに、腹部、胸部又は背部に痛み等の症状があらわれた場合には直ちに医師の診察を受けるよう患者に指導すること。大動脈瘤又は大動脈解離を合併している患者、大動脈瘤又は大動脈解離の既往、家族歴若しくはリスク因子 を有する患者では、必要に応じて画像検査の実施も考慮すること。」

を追記し、[副作用]の「重大な副作用」の項に

「大動脈瘤、大動脈解離:大動脈瘤、大動脈解離を引き起こすことがあるので、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。」

を追記する。

医薬品医療機器総合機構(PMDA)に使用上の注意改訂情報

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA;Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)は、医薬品等の副作用・感染による健康被害の救済、医薬品医療機器の有効性・安全性の審査・調査、医薬品医療機器の安全対策などを行う厚生労働省所管の独立行政法人ですが、こちらのウェブサイトにも使用上の注意改訂情報が掲載されています。

使用上の注意の改訂指示通知(医薬品)

日本で処方されているニューキノロン系の抗生物質【参考】

    • ※自己判断せず、医師または薬剤師に必ずご相談ください。
    • ●アベロックス錠(モキシフロキサシン、バイエル薬品)
  • ●オゼックス錠、同細粒小児用、同錠小児用 (トスフロキサシントシル酸塩水和物、富士フイルム富山化学)
  • ●オフロキサシン錠(オフロキサシン、サワイ)
  • ●クラビット錠、同細粒、同点滴静注バッグ、同点滴静注(レボフロキサシン水和物、第一三共)他
  • ●グレースビット錠、同細粒(シタフロキサシン水和物、第一三共)他
  • ●シタフロキサシン錠(シタフロキサシン水和物、サワイ)
  • ●シプロキサン錠(シプロキサシン塩酸塩水和物、バイエル薬品)他
  • ●シプロキサン注(シプロキサシン、バイエル薬)他
  • ●シプロフロキサシン錠(シプロフロキサシン塩酸塩水和物、サワイ)
  • ●ジェニナック錠(メシル酸ガレノキサシン水和物、富士フイルム富山化学)
  • ●スオード錠(プルリフロキサシン、Meiji Seika ファルマ)
  • ●タリビッド錠(オフロキサシン、第一三共)他
  • ●トスキサシン錠(トスフロキサシントシル酸塩水和物、マイランEPD) 他
  • ●トスフロキサシントシル酸塩錠(トスフロキサシントシル酸塩水和物、サワイ)
  • ●ノルフロキサシン錠(ノルフロキサシン、サワイ)
  • ●バクシダール錠、小児用同錠(ノルフロキサシン、杏林製薬)他
  • ●バレオンカプセル、同錠(塩酸ロメフロキサシン、マイランEPD)
  • ●パシル点滴静注液(パズフロキサシンメシル酸塩、富士フイルム富山化学)
  • ●パズクロス点滴静注液(田辺三菱製薬)
  • ●レボフロキサシン錠(レボフロキサシン水和物、イワキ)他
  • キノロン薬「重大な副作用」に大動脈解離を追加

  • 2019年1月15日 日本経済新聞記事
  • >>キノロン薬「重大な副作用」に大動脈解離を追加

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